中国では米国のNorCal QRP ClubやSmall Wonder LabなどのQRPキットをコピー又は参考にしたアマチュア無線のキットが良く販売されています。
購入したキットの製造元は不明で、添付されていたマニュアルのタイトルには “Frogs calling QRP1.8W Kit” と有りますが、NorCal QRP Club のForty-9er を元にして設計をローカライズした製品と明記されています。製品名の”Frogs calling” の中国名
は蛙鸣(カエルの歌の意味) となっています。”Frogs calling 蛙鸣” ブロックダイヤグラム
ネット通販のサイトを見ると類似の製品はいくつか販売されています。入手できた購入品とは異なるキットの組み立て説明書を見ると、NorCal を NoCal と同じようにミスタイプしていたり、添付の回路図は全く同じでも、出力が3Wの製品や購入したキットの様に1.8Wとなっているものなど、それぞれ若干の違いはあるようです。
添付の説明書は簡単な回路構成の説明、トロイダルコイルの巻き方、部品実装の注意が簡単に記載されています。技術的な説明、実装と確認等に関する実践的な説明は無い、シンプルな内容です。
諸元は以下のようになっています。
- 電源電圧 DC12V
- アンテナ 不平衡型
- 受信時電流 20mA
- 送信時電流 200mA
- 送信出力 1.8W
- 送信周波数 7,023kHz
- 受信周波数 約7,023-7,023kHz (注:原文のまま)
- 電波形式 CW
回路はオリジナルのForty-9er と同じく、受信部はダブルバランスドミキサのNE602を使ったダイレクトコンバージョン+低周波増幅。送信部はNE602で発信した信号を2つのトランジスタで増幅して空中線に供給するという構成です。
NorCal QRP Club のホームページで公開されている NorCal Manuals からForty-9er (49er)関連の資料を探すと、”49er 40m Direct Conversion Transceiver Construction Manual” という資料が見つかります。Forty-9er の計者が最初、基板だけの配布を始め、キット化を行った経緯の紹介から、キット制作の最初にまず部品が正しく揃っていることをチェックするなど、徐々にForty-9er キット制作の説明に入ります。推奨される組み立ての順番に沿って各部位の実装作業方法が記載されており、”Frogs calling” の実装にも役立ちます。
この資料に載っている1996年に作成された回路図と”Frogs calling” の回路を比較してみました。
- “Frogs calling”には、Forty-9er に無いサイドトーン回路があります。
- “Frogs calling”では受信時と送信時で発信器の周波数をシフトして、送信周波数を受信した時のビートを発生させています。Forty-9er ではこの機能が無いので、CW受信時のビート分、送受信の周波数がズレます。
- Forty-9er の発信回路はVXOになっており、可変範囲は約5kHzとなっています。
- Forty-9er は電鍵で直接、①送信回路への電源供給、②NE602へのアンテナからの信号入力ミュート、③AFミュートをしているのに対して”Frogs calling” ではトランジスタ電鍵でスイッチを介して①送信ドライバへの電源供給、②AFミュート、③発信周波数シフト、④サイドトーン、の制御をしています。
- Forty-9er では可変抵抗器によるRFゲイン調整を通ったアンテナからの受信信号はバリコンで同調周波数変更できる並列同調回路を経てN602のミキサーに入力されます。”Frogs calling” ではアンテナからの受信信号はダイオードによる振幅リミッタを経て信号に直列に入った発信回路と同じ共振周波数の水晶振動子によるフィルターを経てN602のミキサーに入力されます。水晶振動子によるフィルターは魅力的ですが、AGCが無いのでN602のミキサーに入力される入力電圧を調整できるRFゲイン調整回路も欲しい気がします。
- 送信出力は”Frogs calling”が12Vで1.8W。Forty-9er は電源電圧9Vで500mW、12Vで500mWと大きく異なります。
AGCの無い受信機を使ったことのある方なら分かると思いますは、Forty-9erにあるRF gain (RF ATT)は欲しい気がします。サイドトーンやアンテナ入力のクリスタルフィルターなどは “Frogs calling “の良いところだと思います。
Forty-9erのVXOで5kHzでは有っても運用周波数を可変出来る事も魅力です。
キットの部品には終段のヒートシンクがありませんが、これで出力1.8W、問題ないかちょっと心配です。
オリジナルをただそのまま部品を実装するだけであれば簡単に終わっていまいますので、少し実験や測定をしながらゆっくりと組み立てたいと思います。